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TOKY Staff Blog
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インタビュー

Interview09 / 植物研究者(I.S.I.J.会員) 河野忠賢さん

2018.05.16

植物会のキーパソンにスポットを当ててインタビューする企画、第9回目。
今回は国際多肉植物協会の会報「I.S.I.J.」にて毎号、植物の美しい写真と、そして磨かれた栽培技術に関する記事などを書かれている河野忠賢さんにお話を伺いました。

 

 

「この人は一体何者なんだろうか?」

 

 

同誌を読むたびに疑問は深まり最近初められたInstagramからメッセージを送りインタビューが実現しました。
ちなみにインタビューは通常温室などに赴くのですが栽培場が非公開の為異例のTOKYの管理場(テラス)で行われました。

 

 

河野忠賢さん
本業はサボテンの刺の進化を研究する研究者。
I.S.I.J.にてとても興味深い記事を掲載するとともに、見て取れる栽培の熟練度と所有しているであろう膨大な植物の数々。写真の美しさや装丁デザインの素晴らしさなどにおいて同誌を底上げする重要人物。
tadayoshi kono

 

 

Pachypodium namaquanum4河野さんが栽培されるパキポディウム・ナマクアナム (Pachypodium namaquanum)。植物に興味が無くともこの美しさは伝わるのではないでしょうか?

 

 

Aloeprinslooi河野さんの手がける記事。I.S.I.J.の最新号よりアロエ・プリンスローイ (Aloe prinslooi)を題材にした特集記事。植物とのドラスティックな出会い、そして美しい写真と丁寧な文章。

 

 

 

ー植物の栽培はいつ頃からされているのでしょうか?

 

小学生から植物を育てていますのでざっと20年弱くらいでしょうか。

 

現在、大学院の博士課程で植物の研究をしています。

 

研究を志す様になったのは、後のことで、まず植物を楽しみ育てることが先でした。要するに生粋の趣味家です。

 

そうして日頃から多肉植物に接して行くうち、どのようにしてこの不思議な形が進化してきたのかということに興味を持ち、サボテン科のアイデンティティともいえる刺の発生進化を研究し始める様になりました。

 

昨年まで読売新聞で連載されていた三浦しをんさんの「愛なき世界」(植物学をテーマにした小説)に登場するキャラクター(サボテンの刺を研究する院生役の加藤)のモデルにもなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーその研究はどのようなことをされているのでしょうか?

 

普通の植物でいうところの葉が変化したものがサボテンの刺にあたります。

 

サボテン科の進化の過程で、ひらひらした柔らかい葉から、尖った鋭く硬い刺に至るまでに一体どんな進化のステップがあったのか。

 

そうした形態の進化を、遺伝子のレベルで研究しています。

 

 

 

ーI.S.I,Jに寄稿されている経緯を教えていただけますか?

 

国際多肉植物協会の会長である小林さんとは古くからの仲もありお手伝いしている、と言うところと私も今の多肉植物の世界やこれから初められる方に伝えたいことがあるので記事を書いています。

 

あとはデザインや編集が元々好きというベースはあります。

 

 

 

ーこういう人に読んで欲しい、というのはあるのでしょうか?

 

ターゲットにしたいのは”初めて間もない人”に響くように書いています。

 

特に最近園芸の世界には、ファッションやインテリアから入る人が多いのでそういう人たちのこともイメージしています。

 

そして大きな流入口としてinstagramなどSNSの影響が強いと思うのですがそういう所から入った人たちが見て「植物はこんなに素晴らしいんだ」という事が伝わればいいと思っています。

 

多肉植物の不思議な形は、魅力ですから、多肉植物の姿に魅かれるのは至極当然のことだと思っています。

 

ここ数年の多肉ブームは、これまでの流れとは全く違うところから、ドッと裾野が増えた様子です。

 

サボテン大好き玄人おじさんたちのために書いているのではなく、そういう人たちに届く様に書いているつもりです。

 

 

Caralluma solenophora怪しい花をつけた魅惑のガガイモ カラルマ・ソレノフォラ (Caralluma solenophora)こういう植物の美しさに気づくには意外と時間がかかります。

 

 

皮肉に思うのは、植物界でもっとも人心を魅く姿をした多肉植物という植物が、数ある植物の中でも最も育てるのが難しい植物の一つだったということです。

 

ここ数年のブームを見ていると、やはり植物のことが心配になりますね。

 

パンジーも育てたことの無い人が、初めて手にする植物がパキポディウムというのは、やはりちょっと無理があるように思います。

 

枯らして学ぶというのは事実ですが、やはり順序がありますよね。

 

買った当人にしても枯れたら、いやですよ。残念なものですよ、いやになります。

 

うまく行くと嬉しいものです。もっとやろうと思うものです。

 

健康に維持して、さらに魅力の出る様に育てようと思うでしょう。

 

 

 

Pachypodium brevicaule 恵比寿笑多くの成長点から咲き誇る鮮やかな黄色い花をつける、パキポディウム・ブレビカウレ 恵比寿笑 (Pachypodium brevicaule)。花を見れるのは僅かな期間で、現地球はそれなりに練度を積んだ生育が必要となります。

 

 

モノではないということです。買って終わりではない。

 

せっかく興味を持った人が正しい経験と知識を持たず枯らしてしまい、離れて行くのは残念なことです。

 

めげずにうまく育てられる人が増えて、もっとこの業界の裾野が広がっていけばいいと思います。

 

ブームになると、SNSなどの影響で人気種が一点に集中しがちですが、始めたばかりの人がそれで多肉植物が分かった様に思っては残念です。

 

多肉植物の世界は広く、半端ではない。あちらこちらにきら星のごとき種が存在しています。そういったものを広く紹介して行けたら、と思っています。

 

インスタ世代の人たちの大部分は、I.S.I.J.のような会などに参加せずに楽しんでいる様子です。

 

ただ、そのような会に参加することで、同じ興味を持った人に会えますし、きちんとした栽培の仕方などを知る機会は増えると思います。

 

 

 

Opuntia galapageia1黒肌で、成長が遅く、トゲの美しさは比類なし…河野さんが今特に気に入っているサボテン オプンチア・ガラパゲイア (Opuntia galapageia)

 

 

 

ーですが、かなり専門的な内容が多いことも事実ですよね?

 

簡単なことを難しく書く必要はないですが、本質的に難解なことを簡単に書くことはできないからです。

 

まだ知識の浅い人に向けて書いているといいましたが、内容を下げて書くということはしません。

 

植物を育てる経験を積んで、いずれまた読み返してみると、なるほどと分かるということもあるでしょうし、そういう意味で何度も読み返してみてもらえればと思います。

 

毎回それぞれの植物について体験と鑑賞の髄を書いているつもりです。

 

好きというのは、一見ひとりよがりな価値観ですが、不思議と共感を呼ぶものです。

 

ただ、読んでもらいやすいように、文章の工夫はしています。

 

 

 

ー記事を書く時に大事にされていることはあるのでしょうか?

 

写真をみてもらうだけでも良いのですが、やはり書かれていることにも目を通して欲しいですね。

 

そのために、読んでもらう際の工夫はしています。

 

美しい写真の側に文章があれば、一体何が書いてあるのか、気になってくるでしょう。

 

ですから、文章は勿論ですが、紙面のレイアウトや写真の美しさにむしろこだわっています。

 

デザイン性を重視していますので、勿論植物の種類にもこだわりますが極端に言えば種類関係なくその植物のデザインが優れていればそれで良いという考え方です(極論ですが)。

 

意外に思われるかもしれませんが、私の様な栽培家で研究職の人間でも陶器鉢も使います。それは植物体の魅力を引き立たせるためです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーどのような陶器鉢が好みなのでしょうか?

 

多肉植物は、それだけで主張の強い、存在感のあるデザインをした植物ですから、鉢までゴチャゴチャしたデザインでは、目に飽きが来てしまう。

 

そして私の好きなデザインの鉢というのは、根本には、育てやすい鉢です。

 

どこまでも育てるという視点から発したデザイン。それをつきつめていけば、自ずと格好よくなるはずだと思っています。

 

最近流行の鉢を見ていると、口径の小さい割に分厚く、正直言って作りにくい印象の鉢が多い。植わっているのを見ていて、息苦しそうな植物は多いです。

 

陶芸家が、植物のことを分かっている必要はありませんが、昨今の鉢をみれば、植物を作ったことが無い人が作陶しているというのは一目瞭然です。

 

植物の視点に立った作陶家がいないというのは、今の鑑賞鉢の世界は未熟というか、自分の意匠を示すだけの思いが強すぎるのが残念です。

 

もう少し、無私な鉢が欲しいですね。

 

自分好みの鉢が売ってないなら、そのうち自分で作ってみたい思いはあります。

 

作陶も植物趣味の楽しみの一つとして、やれたらいいんですけど。

 

 

Euphorbia poissoni variegated恐ろしく美しい斑入りの葉、そして猛毒の樹液を持つユーフォルビア・ポイゾニー 錦 (Euphorbia poissoni variegated)

 

 

(・・ここで視界に管理場のユーフォルビア・パキポディオイデスが目に入りふと聞いてみました。)

 

 

 

ー例えば、ユーフォルビア・パキポディオイデスは自生地がパキポディウム・バロニーととても近く、そしてその植物のデザイン自体もとても似ています。これは何か理由があるのでしょうか?

 

先に言っておくと事実は分かりません。ただ幾つかの可能性が存在します。

 

まずは可能性として、収斂進化 (しゅうれんしんか)です。

 

その進化の内容の詳細は興味があれば個々で調べて欲しいのですが簡単に言えば複数の異なるグループの植物が、同様の生態的地位についた時に、科属種に関わらず似通った姿に進化することを指します。

 

もしくは擬態でしょうか、生態的優位に立つ他の植物に近づくことで生態を維持・拡大することを目的としている可能性もあります。

 

地理的にも全く関連が無くコロニー間が長距離に渡り離れていてもこういう似た植物が現れる事象は発生します。

 

ただ事実は未だ持って解明されないことが多いのです。

 

サボテンとユーフォルビアの一部にも非常に酷似したものが存在しますが上記で述べた進化の過程に当てはめて考えることができるでしょう。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA現地球のワイルドなオトンナ・ヘレイ (Othonna herrei)

 

 

まつわる話で一つ思い出しました。

 

Othonna herreiと言う植物がありますが、この植物は、ある別の多肉植物に擬態していると言われています。

 

休眠中のヘレーの姿は、疣立っていてTylecodon cacalioidesのそれとよく似ています。

 

チレコドン カカリオイデスというのは、家畜が食べると死に至るようなかなり毒性の強い植物です。

 

そのため、毒性の無いオトンナヘレーは、これに擬態することで動物からの食害を避けていると言われているのです。

 

 

 

ー栽培に関してこだわりなどがあれば教えてください。

 

一例ですが、内地球でも現地球であっても私でしか成しえない姿にすることを1つのポイントとしています。

 

例えばこのユーフォルビア・クラバリオイデスですが私の育てているものは輸入されてからも完全に山木の状態で大きくしています。

 

多くの人は枝を大きく伸ばしてしまい現地の姿とは異なる場合が多い種です。

 

様々な植物に言えますが内地球であっても現地球に勝るような迫力ある姿に育てることも可能です。

 

それが自分が植物を栽培する1番大きな意義だと思っています。

 

 

群生した現地球に勝るとも劣らないユーフォルビア・クラバリオイデス (Euphorbia clavarioides)

 

 

 

ー現地球と言えば、国内実生とは程遠い凄まじい形状のものがありますがあの様に育てるポイントはあるのでしょうか?

 

健康的に維持するだけでなく、より積極的に作り込む。それはやはり一朝一夕ではない、栽培の経験が必要ですし、なによりも忍耐が必要です。

 

これだけ多様な多肉植物は、栽培の仕方も一様ではないですし、実際まだ栽培が確立されていないような種類も数多くあります。まずは健康に育てることです。

 

人間の時間と自然の植物のそれは尺度が違っているということを腹に据えることが第一でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

現地球の持つ枝振りの厳つさや、詰まり具合、荒々しさというのは、言って見れば”自然の剪定”の結果と言えます。

 

多肉植物は、根本的に乾期を経験する植物です。乾期を乗り切る為に、自分の身体に水分を蓄える様に進化してきた植物です。

 

現地球の成長の仕方というのは、おそらく3歩進んで2歩下がるというような様子であるはずです。

 

成長期に成長して伸びた部分は、休眠期にはいくらか枯れ込んでしまうのです。

 

乾燥は当然ですが、強風や、砂粒、過剰な太陽光線などといったストレスによって末端の枝は枯れてしまいます。

 

こうして、じり、じり、と長い時間をかけて、大きくなってゆくのです。

 

内地球が10育つのと、現地球が同じ10育つのでは、そのかかっている時間の長さが違うのです。

 

 

Pachypodium enigmaticumとても貴重で現地球はほとんど存在しない謎に満ちた新種のパキポディウム・エニグマチカム (Pachypodium enigmaticum)河野さんはエニグマチカムの発見者から友好の証として現地球を譲っていただいたそうです (上は接ぎ木、下は現地球)。刺の様子などを比べて見ると分かりますが、接ぎ木した株と、正木(一度も接いだことのない株)の株では、姿が全く異なります。

 

 

enigma特別に公開の許可をいただいたエニグマチカムの貴重な現地球。ラベルに書かれた英字の書体も綺麗ですね。発見者の方は種を守るために自生地の一切の情報を開示されていないそうです。

 

 

そう言う意味で、もし内地球を原地球の様に作りたいと思えば、それだけの時間に耐える忍耐が必要だということです。

 

昨日切って、来年などというような世界ではありません。

 

また植物は、先端の芽がつぶれると脇芽が複数吹きます。

 

枯れることで、一芽が三芽に、それを繰り返すことで、節間の詰まった、厳つい姿に育って行くのです。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA河野さんの実生されるケラリア・ピグマエア (Ceraria pygmaea)。

 

 

ケラリアのピグマエアなど、ご覧になってどう思いますか?。

 

あれを実生から作ることを思うと、途方も無いです。自然の剪定というのは、そういうものです。

 

丸く作るというのは、忍耐がいるのです。

 

良い素質の苗をみつけて買う時でも、ああ30年後にはこんな姿になっているな、と思い描いて買うのは楽しいものです。

 

 

 

ー今後の自身の活動で目標などはあるのでしょうか?

 

既に導入されている種類でも、知られていないものや、あまり評価されていないものを紹介していくことに加えて、これから新たに導入されてくる植物についてもきちんと紹介して価値作りをして行きたいと思っています。

 

日頃から、自分の楽しみの為にいつもアンテナを伸ばしていますし、未だに日本に導入されていない植物に触れる機会は、やはり多いです。

 

なので、もし本当に新しくて、面白いものが目の前に現れたときに、きちんとひのき舞台を植物に与えて、そうして業界に価値を認められて、浸透させていくことが大事なことだと思っていますし、自分自身、その価値作りの過程にも、楽しみを感じてやっています。

 

I.S.I.J.での連載では、既に流通のある植物の魅力について書いていますが、最近始められた多くの人にとっては知らないものばかりでしょう。

 

知らない過去もまた、新しいのです。

 

 

 

ー現在の多肉植物のブームに関して何か思うことはありますか?

 

植物の最も輝く瞬間というのは、桜の七部咲のように、一年のうち少しの限られた時期だけです。

 

路傍の桜であれば、花見を楽しんで、後は葉の茂った時期を気にしなければ済みますが、鉢植えとなると、当然世話がいるのです。

 

ずっと付き合わなければ行けないのです。モノではないということです。買って終わりではない。

 

またブームというのは、いろいろなところで山が生まれては潰れてを繰り返すものです。

 

そういうものに左右されることなく自分の好みに従って、植物を選び、信じて、楽しむところが重要でしょう。

 

新しさや珍しさにおもねらない、美を求める心がなにより大切だと思っています。

 

 

Lenophyllum guttatum Red variegatedルビーの様な美しく赤い斑が入ったレノフィルム グッタツム 錦 (Lenophyllum guttatum Red variegated )

 

 

ー最後に比較的最近に植物を初めた方にメッセージなどあれば是非。

 

最近の人の嗜好をみていると、素人なのに欲しがるものは玄人並という印象です。

 

SNSやインターネットで人気があり、見栄えの良い完成球を目にすることが多いからなのでしょう。

 

私は、ハオルチアの十二の巻が最初の多肉体験でした。

 

ブームの渦中に巻き込まれず、リーズナブルな普及種にさえも魅力を発見するということが大事ではないのでしょうか。

 

既に人気なものに殺到するのは作品のキャプションを読んでから作品を見るようなものです

 

これでは、美を求める心が養われることはないでしょう。

 

植物の美しさと直接に付き合って、楽しむことが大事だと思います。

 

植物の美しさというのは、新しさや、珍しさなどとは無縁ですから。

 

 

 

雑記

 

インタビューする時はいつも急なのですが今回はお声がけからインタビューする間が最短でした。

 

栽培場に赴けなかったのでその時間を短縮できたのでこういうのも手だなと思いました 笑。

 

今回のインタビューで「さぁ、I.S.I.J.を買おう!!」とかではないのでそこは誤解なきよう。完全に非営利です。

 

ただ…図鑑レベル、いやそれ以上の写真の美しさと装丁の素晴らしさに私たちが感動したことに他ならず、今現代において植物が好きで河野さんの記事を読まないことはとても損だなと本当に思ったからです。

 

特に最近で言えば229~231号で3回に分けて特集されたパキポディウム・ナマクアナムの記事は現在栽培されている人たちにとってとても重要な事が多く書かれています。難しいこと抜きにしてもその美麗な写真に酔いしれてほしいです。

 

その記事で最も印象的だったのは「そしてnamaquanumという名前、これ以上に美しい綴りの学名は他には思いつかない。」綴りだって美しいデザインなんだと思わせてくれるその一文にモダンな楽しみ方をする園芸の明るい未来を想像してしまいました。

 

Pachypodium namaquanum実生ため息がでるほど美しいパキポディウム・ナマクアナム 光堂 (Pachypodium namaquanum)の実生苗たち。この子たちのタイプ別の写真も掲載されていました。

 

 

Euphorbia horrida variegated極めて美しく希少なユーフォルビア・ホリダ 錦(Euphorbia horrida variegated)。この植物との出会いもI.S.I.J.に書かれていました。すごくドラマチックでしたので是非読んでみてほしいです。

 

 

興味があればI.S.I.J.では月に一度例会を開かれていますので覗いてみてはいかがでしょうか?
I.S.I.J.ホームページ

 

All photo by / Tadayoshi Kono

Interview08 / SPECIES NURSERY 藤川さん

2017.09.22

植物界のキーパーソンにスポットを当ててインタビューする企画、第8回目。

今回は原種のさまざまな植物を扱うSPECIES NURSERY(スピーシーズ ナーサリー) 藤川さんにお話を伺いました。

 

第5回のBANKS Collection 杉山拓巳さんからのご紹介で実現いたしました。自然豊かな神奈川の高台に立ち並ぶハウスには数え切れ無い美しい植物が…充実したインタビューとなりました。

 

 

藤川史雄さん
SPECIES NURSERY園主。
大学卒業後、建築関連会社に就職した数年ののち、 幼少の頃から植物好きだった特色を生かしたいと園芸店へ転職 店舗企画、店長などを経て、ティランジア界の第一人者のもとで 専属管理を任せられる2001年SPECIES NURSERY(スピーシーズナーサリー)を設立する 。
ティランジア(エアプランツ)・多肉植物・その他個性の強い植物を 取り扱い、その普及に努める
SPECIES NURSERY

 

 

DSC02185園主藤川さん。最初は寡黙な印象でしたがインタビュー終盤はオチャメでファンキーな人と言う印象になりました。

 

 

 

ー植物のお仕事に携わってどれくらいなのでしょうか?

 

植物を触りはじめたのは小学生のころですが植物を生業として20年くらいでしょうか。

 

ちょうどガーデニングブームが訪れた時だったのでその当時は園芸店もとても活気に満ち溢れていました。

 

当時から振り返ると今はやはり園芸店は元気が無い印象ですね、植物はブームなのに変ですよね。

 

今はファッションやライフスタイル関連のお店で植物が売れるので時代の流れをとても感じます。

 

 

 

DSC02123ぺラルゴニウム・シゾペタルム (Pelargonium schizopetalum)の美しい花。ハウスの中はいい香りに包まれていました。

 

 

ーブームと言うことで何か最近思うことなどありますか?

 

特にコーデックスが人気なのが面白いなと思います、昔は今ほど育ててる人が少なかったので… 笑。

 

ただこれらは特にそうですが伸ばすというよりも太らせるような栽培方法が求められるのでわりとマニア向けなんだろうなと思います。

 

まぁでも増やしやすい植物でも無いので「そのうち国内にも入ってこなくなっちゃうだろうな〜」とは思っています。

 

だから今持っている植物はみなさん大事にしてほしいですね。

 

 

DSC02115ハウス内の一角には巨大なアデニア・ペチュエリー( Adenia pechuelii)が鎮座。

 

 

 

ー以前雑誌の企画で自生地に行かれていましたがその際になにか驚きなどありましたか?

 

驚きも何も…南アフリカなんてめちゃくちゃすごかったですよ!!

 

ケープタウンから上のナミビアの手前まで移動したのですが、もう、植物の層が半端じゃない、尋常じゃないです。

 

1つの地域で「どんだけの種類があるんだよ!!」と常識を覆されました。

 

ハンタム国立植物園という所のお話なのですがもともと牧場で牧畜が自生の植物を食べていたためにオーナーが植物園にしたそうです。

 

壊滅状態だったその地も20年もしたらとんでも無い植物の宝庫に変貌を遂げたそうです。

 

調査で1㎡の土を掘り返してみるととんでも無い数の球根が出てきて、全て数えたら2万個もあったそうです。

 

 

DSC02126人気のいわゆるケープバルブが2万個…好きな人は気絶するでしょう。写真はドリミア sp (Drimia sp)

 

 

 

ー例えばそんな中に人気のブーファンなどもあったりするんですか?

 

ブーファンは人気があるからなのかどうかは分かりませんがほとんど見ることはできませんでした。

 

ただ運良くブーファン・ハエマントイデスを2株ほど見つけることができました。

 

まぁでも行くとこ行けばたくさんあるんでしょうね。皆それぞれの土地の地主は柵で囲って入れないようになっているのでその中はどうなっているかは確認できませんでしたから。

 

 

ーちなみに話はずれますがブーファンみたいな皮が密集した球根植物って土中に埋まっていたらすぐ腐りそうなイメージなんですがどうなんでしょう?

 

あ、自生地のものも見ましたが半分くらい出ています、完全に埋まっていませんでした。

 

これはブーファンなどの球根に言えることですが生育上であまりに球根を出しすぎると弱ります。ただ埋めると湿気の多い日本だと腐るリスクが高まるので1/3くらいを埋めてあげるのが良いと思います。

 

大きくするならなるべく埋める、現状維持で鑑賞が重要であれば球根を多めに出すような感じでしょうか。

 

ただ埋めてもブーファンなどはあれだけ皮がたくさんあるので芯まではそうそう腐らないと思いますよ。

 

 

DSC02129スポットが美しい葉が人気のレスノバ・メガフィラ(Resnova megaphylla)

 

 

 

ー植物の世界の面白いというか不思議な?話があれば教えてください。

 

山取りされた立派な完成品の多肉植物なども元を考えれば自生地に生えているものでそれを取る人はおそらく地主や管理者にお金払わずに取っていると思うんですけど(お金払って取っている業者さんもいるかもですが未確認です)。

 

それが国内では立派な価格で取引されているって不思議な世界ですよね、もしかしたら自生地では雑草と変わらないかもなのに 笑。

 

一般の初心者の方は特に抜き苗でそれらを購入して上手く育てられないなんて普通で、長年栽培している僕らであっても未知の植物はいつもトライ&エラーですからね。

 

だからそうやって失敗しても愛情持って美しく育て続けてきた植物にはやっぱり価値があるんだなぁって我ながら思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

あと最近はネットなどを使って上手に植物を輸入している人がたくさんいますよね。

 

ちょっと複雑な気持ちになることもありますがそれも時代性を感じるユニークな事柄だと前向きに捉えています。

 

ただ古くから栽培や生産をしている人たちもこういう時代ですからそのあたりを意識して上手にお金儲けをできるようになればと思っています。

 

勿論僕も含めてですけど 笑

 

 

DSC02161幾つものハウスの中を丁寧な説明の上で案内していただきました。ちなみに置いてある缶は灰皿だそうです^^ 。

 

 

 

ー今困っているようなことはありますか?。

 

BANKS COLLECTIONの杉山君とも話すのですが「植物の値付けって難しいよね」ってのは大きな課題ですね。(これは関連する記事を先行して書いています)

 

投機目的の思惑が介入したりすると価格が一気に高騰したり逆に翌年は増えすぎて価格が乱高下してしまったり…。

 

例えば僕たちは昔から維持している植物で、買った人たちは皆枯らしてしまった植物とかよくあります。

 

そういう植物は結局世の中にあまり出回っていない状態ですので価格も不安定と言うことになります。

 

そしてあまりにも安定しないと純粋に欲しい人たちが手にすることができません。

 

初心者の方にも勿論興味を持ってほしいのですがそういう人も様々な情報に右往左往されてしまい結局は大きな損をしてしまうこともあるので本当に値付けは課題ですね。

 

難しいとは思いますがレア、希少、投機、そういうことを超えて純粋に生育を楽しんでくれる人が増えればいいなと思っています。

 

 

DSC02181美しく配置されたディッキアの実生ゾーン。愛情を持って、そして美しく生育されている姿勢に感服です。

 

 

ー値付けに関しては今後の大きな課題と言えそうですね。

 

これは僕だけに限らないですが地道にやっている人がちゃんと儲かるようにしたいです。

 

額に汗して働いている人(例えば生産者さん)こそが儲かるようにしたい。まぁこれは自分にも当てはまるので課題ですね。

 

植物の値段を維持して、そこに夢やあこがれもあって
単純に金額を上げるとかではなく僕ら販売側もそうだし買う側にも新しい価値観が生まれればこういう悩みも減るのかなって。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとは…希少とか人気があるとかそう言う要素だけでなく“思い出”“思い入れ”があるからこそそれなりの値段をつけるということも大事にしています。

 

例えばホヘンベルギア・レオポルドホルスティ ‘ダンクローン’(Hohenbergia leopord-horstii ‘Dan clone’)というタンクブロメリアがあります。

 

これは有名なブロメリアのコレクターであるダンが作り上げたホヘンベルギア(通称:ダンクローン)なのですがこの株がアメリカのブロメリア協会のカンファレンスで賞を取ったんです。

 

 

DSC02105ホヘンベルギア・レオポルドホルスティ ‘ダンクローン’(Hohenbergia leopord-horstii ‘Dan clone’)を手にする藤川さん。

 

 

僕はそのダンクローンを見てダンに「すごいよダン!!」と超興奮して賛辞したところダンが「そんなに好きなら…」と言って子株をくれたんです。

 

今はダンクローンと言う名前でそこそこ流通していますがその当時の子株をもし売るとしたら(売らないと思いますが)相当高い値段をつけると思います。

 

そこは先程お伝えした”思い出”などの目に見えないストーリーがその植物には詰まっていて、その価値にもし金額をつけるとしたらどうしても高くなってしまう。

 

そう言った“自分なりのスペシャルな植物”がこのハウスには本当に多くあります。見た目は他で流通しているものと同じでも纏うストーリーが異なるものが多いことをご理解いただけたらと思います。

 

 

DSC02192最後に見せてくれた燃えるように赤いチランジア・ブルボーサ ‘レッドブル’(Tillandsia bulbosa ‘Red Bull’)。一つ一つの植物に思い入れがあります。

 

 

雑記

 

冒頭でも書きましたが藤川さんとお会いするのはこの日が初めて、お互い緊張していたと思います。受け入れてくれてありがとうございました。

 

様々な書籍でその執筆内容やお噂を聞いており”怖い人”という印象を持っていたのですがインタビュー終盤は本当にニコニコしてて優しい方だなと言う印象に代わりました。

 

とにかく「植物が本当に好きで好きでしょうがない人なんだな」と感じました。愛情でも経験でも遥か先にいる先人なので背筋が伸びる思いです。

 

この他にも小さい頃の”サボテン小僧”と呼ばれていた幼少時代のお話や渋谷のデパート屋上で実店舗をやられていたお話など盛りだくさん過ぎて今回のインタビューには載せることはできませんでしたがまた何かの機会でご紹介できたらと思います。

 

藤川さん(奥様も)ありがとうございました! また近々伺わせてくださいませ。

 

 

DSC02149冬型のコーデックスも盛り沢山でした。

 

 

DSC02154チ…チレコドン・ハリー!!!!(Tylecodon hallii)。

 

SPECIES NURSERY HP
SPECIES NURSERY Facebook

 

Interview07 / 法花園 近藤さん

2017.07.26

植物界のキーパーソンにスポットを当ててインタビューする企画、第7回目。

今回はTOKYも参加する大阪の人気植物イベントWILDWOODを通して交流を深めた愛知県でチランジア・キアネア(Tillandsia cyanea)を生産する農家 法花園の3代目園主 近藤さんにお話を伺いました。

 

BANKS CollectionのCOO 杉山さん曰く「神様のいたずらとしか思えない」と言わしめた伝説の選抜個体、白い花序を持つキアネア・ロク。

そしてタイから輸入されるビカクシダの数々…一見愉快だけれど実は歴史ある農家の近藤さんにお話を伺いました。

 

近藤隆彦さん
チランジア・キアネア生産農家の三代目園主。
キアネアに対する圧倒的な知識と経験、そして今エキゾチックプランツの世界でも人気のあるビカクシダの本格的な輸入・生育・生産。
その他にも溶接機を使い植物のディスプレイなどにとどまらない什器の制作を行う。
チャームポイントは高低差のある頬骨。
法花園

 

 

DSC02222エメラルドグリーンに輝くキアネアという草原の中で佇む法花園の近藤さん。

 

 

 

ー「法花園」と入力すると「放火園」と出るのでやめてもらっていいですか?

 

いや、それ僕のせいじゃないです。

 

 

 

ーあとキアネアってミヤネヤみたいで紛らわしいのでやめてもらっていいですか?

 

いや、それ自分の問題だし。ってか頭おかしいんか。

 

 

DSC02244ソバージュ・ネコメガエルを自在に操る法花園の近藤さん。

 

 

 

ー冗談はさておきいつから近藤さんはキアネアの生産してるんですか?。

 

僕は3代目なんですけど要はおじいちゃん、父親、そして今現在は僕が引き継いでいる感じです。

 

もともとは継ぐ予定はなかったので大阪で美容室を経営していたのですが、父親も年齢が年齢と言うのもあり…ただ昔から植物は好きだったので抵抗なく継ぐことができました。

 

ちなみに僕には兄がいるのですが虫がさわれないので必然的に僕が継いだというのはここだけの話です。

 

 

DSC02198メキシコ亀甲竜を心配そうに見つめる法花園の近藤さん。

 

 

ーでも美容室経営していたらなかなか後を継ぐというのも大変ですよね?

 

そうですね。その当時は普通に美容室を経営できていましたし。

 

辞める理由はなかったのですが父親が「もう辞める」と言い出して、でもそれでおじいちゃんの代から続いているキアネアの生産をやめてしまうのはあまりにも勿体無いなと思い継ぐことを決意しました。

 

ただ、美容室でも植物を売っていましたし、スムーズにキアネアの生産者になれたなって思います。

 

 

 

 

 

ー何か後を継ぐことなどで大変だったこととか苦労したことはありますか?

 

…いや……特に…なにも無いですね…(「え?」しばし沈黙が続く)

 

小さい時から手伝ってましたし、生産や出荷のシステムが決まっているので…

 

強いて言えば夏になるとハウスの周りや中に雑草がたくさん生えるので異様に草刈りが多い、くらいですかね。僕綺麗好きなんで。

 

と言うわけで申し訳ないくらいに苦労してないです。すいません。

 

 

DSC02224青々と生い茂るキアネア。取材時は花の見頃のシーズンが終わったくらいでした。とても美しいので残念。

 

 

 

ー(気を取り直して…)キアネアの魅力を教えてください。

 

虫がつかない、子をたくさん吹く。

 

あまり購買目線で聞くと魅力的に聞こえませんが、この2つは生産目線で言えばスーパー大事です。

 

ちなみに言えばうちが今まで生産して出荷した全てのキアネアはたった1つのキアネアから出たクローンを選抜したものです。

 

 

 

ー選抜漏れってやっぱり処分しちゃうんですか?。

 

昔は処分をしたりもしてたのですが現在は選抜漏れした(株姿、花姿がよくないもの)キアネアの遺伝子が必ずしも次の子株に引き継がれるわけではないと考えています。

 

例えば花の形が悪い場合は花を抜いてしまいます。そうすることによりその次の年にクランプ(群生)になり株立ちします。

 

そういった株立したキアネアに観賞価値を置くお店さんもありますので無駄なく使うことができます。異常なほどにロスが無い植物です。

 

 

 

DSC_0019_s不思議な造詣のキアネアの花序

 

 

ーそれにしてもキアネアの花は本当に不思議な形ですよね?(しゃもじみたいな?)。

 

ちなみにピンクの部分は花序(花がつく茎)なので実際の花は小さい紫の部分です。

 

年がら年中、毎日見ていると分かるのですがその花序もギザギザが少ないものや平たくて大きいものもあり一見同じように見えてもそれぞれ個性があって楽しいです。

 

そしてその個性の中から突出したものとしてある日、白っぽい花序のものが出てきて選抜を繰り返しました。

 

そうして作り上げられた選抜個体が新しく品種登録されたチランジア・キアネア “ロク”(Tillandsia cyanea “roku”)という品種です。

 

植物の世界では新しい品種を作ると自分の子供の名前をつける人が多いのですが、僕も息子の禄(ロク)の名前をつけました。

 

 

DSC_0034真っ白な花序が美しいキアネア ‘ロク’。

 

 

ー選抜方法を詳しく教えてもらってもいいですか?

 

白い花序が出たものの子供も白なのでその株をクランプにしたりして白い個体のクローンを作り続けることにより更にはっきりと白い花序のものを作り続けました。

 

BC杉山さん曰く「神様のいたずら」だと。あの人がそういうのだから誰にも理由なんてわからないんだと思います。

 

ちなみに「花序が白で花も白」という個体自体はすでに海外のナーセリーに存在していて、アントシアニン(色素)が抜けきっているのでそうなったのですが、ロクの花はアントシアニンが残った状態で紫です。

 

ロクを見せた時、いつも冷静なBC杉山さんがかなり取り乱していたので…奇跡なんだと思います。

 

ロクが出たのは今から10年位前。僕と父は気に入っていたのですが、市場に出しても値段もつけにくいし地味な印象もあるので「どうかなぁ」という感じでした。ところがある日杉山さんがハウスに来て教えてくれたのです。

 

 

ーじゃあ恩人ですね。

 

そうですね、それと関係あるかどうかは分かりませんが、BC杉山さんのお父さんが週4日くらい法花園に遊びに来ます。

 

 

DSC02231本文とは関係ありませんが綺麗好きの近藤さんのハウスは周辺も綺麗です。この後川の中にいるアメリカザリガニを見せてやると息巻いて川に入ったのですが採れなかったのはここだけの話です。

 

 

 

ーそのうち白い花序のロクで大儲けできますね、ウハウハですね。

 

う〜〜〜ん…全くあてにしていないというか…「欲をかかない」という近藤家の家訓があるので。

 

近藤家は長年キアネアを生産してきて、時代によっては(例えばバブル時代)流されそうになったこともありましたけど、「淡々と日常を過ごす」ということを肝に銘じていたからこそこれだけ安寧に続けてこられたんだと思います。

 

今はロクを増やしている段階ですが、僕達が意図的に高くしようとかそういうことは全く考えていません。

 

それはお客さんなり周りの人がロクの価値(ここで言う価値とは金額を決める部分的な価値)を決めてくれればいいと思います。

 

 

 

DSC02206大きなハウス一棟に所狭しと並べられるキアネアとビカクシダと法花園の近藤さん。

 

 

 

ーそれではビカクシダに力を入れたきっかけなどを教えてください。

 

もともと趣味でビカクシダを生育していましたが、キアネアだけを淡々と育てる業務を続けていると “飽きる!!” というのがあってビカクシダの販売もしてみよう、となりました。

 

1つの方向しか見ていないと周りが見えなくなってしまってバランス感覚が欠如したり、そういうこともあり法花園として幾つもの可能性や方向性は必要と考えています。

 

それはもう1つの事業である什器制作に関しても同じことが言えます。

 

後は「じゃあ何故ビカクシダなの?」と聞かれればやはり “植物としての分かりやすさ” は一番大きいかもしれません。

 

成長している姿も分かりやすいですし生育のメカニズムもビカクシダによって様々ですがそれであっても僕からしたら特性が掴みやすいです。

 

例えばタイから輸入して日本に来て生育すると顔つきが変わったりするのも面白いですね。

 

 

 

 

 

ー何かこだわっている部分などありますか?

 

抜き苗輸入してそれをいわゆる  “転がし”や “右から左” では売りたくないですね。

 

法花園のハウスは本当に環境がいいのでしっかりと生育して自分なりに “完璧な状態” にして販売しています。

 

僕が自信を持って育てた株をお客さんが買って、いづれ子株が出た時に自分が売ったその作り込んだ株が見本になるようにと考えています。

 

 

DSC02210お気に入りのビカクシダ ホーンズサプライズ(Horne’s Surprise)の後ろでおどける法花園の近藤さん。

 

 

ー今個人的に気に入っているビカクシダはありますか?

 

原種ではない交雑種なのですがホーンズサプライズ(Platycerium sp. ‘Horne’s Surprise’)というビカクシダがお気に入りです。

 

原種原理主義の人から見たらめちゃくちゃ曖昧なビカクシダなのですが自分はあまりその辺にこだわりはありません。

 

もちろん原種も好きですが、種名のはっきりしない曖昧なビカクシダも好きですし、もっと言えば見た目が好みならなんでも好きです。

 

近藤家の家訓的にも“原種”とか“レア”とか、そういうことに振り回されたくないんです。

 

強いて言えば「この形が欲しい!!」とか言うのはあります、ただ種に対してこだわりは全くありません。

 

 

DSC02202ビカクシダが心地よい環境は人間にも心地よい、それを体現する法花園の近藤さん。

 

 

ービカクシダ関連で何か今後の活動はありますか?

 

実は以前こちらのインタビューでも紹介されていたWILDWOOD主宰の野本さんと

「Waft」(ワフト)と言うプロジェクトを開始しました。

 

ざっくり言うと僕らが選抜したビカクシダを保証付きで販売する、というものです。

 

「植物に保証つけんな、ややこしなる!」という意見もありますが、僕らも今まで販売してきて色々と思うことがあるのでこういう形式をとることにしました。

 

その代わりに保証つきなのでそのへんのお店で買うよりも勿論高価だと思います。なのでそれはお客さんが用途によって選んでくれればいいと思います。

 

 

IMG_1964顧客管理するためのシリアルナンバーカード、どうやら法花園の近藤さんは本気のようです。

 

 

ーそれでは什器制作のお話も聞かせてください。

 

主に植物をレイアウトしたりディスプレイするのための什器を作るブランド「什木」といいます。

 

美容室を経営している時に店内に植物をディスプレイしたいと思い半自動溶接を見よう見まねで覚えました。お陰で今は結構上手だと思います。

 

 

IMG_1965

 

IMG_1966

 

 

お客さんからオーダーがあれば自分で作れるものであればなんでも作ります。

 

みなさん、全くゼロベースで考えるというよりはInstagramなどで今まで作った製品を見てイメージを膨らませる方が多いですね。

 

 

ーそれでは最後に何かありますか?

 

色々な話がでましたが、まずは自分が楽しんで、心にゆとりを作って、いいものを作る(植物も什器も)ということをもっと高めていきたいです。

 

あとはBCの杉山さんがキアネア “ロク”をドイツに持っていってくれて、栽培試験を現在受けている状態です。

 

そこで合格すれば他の諸外国でもロクが栽培されたりする可能性があるのでキアネアの部分でも世界を視野に活動できればなと思っています。

 

ただ僕には “欲をかかない” と言う近藤家の家訓があるので別にそれでマーケットができなかったとしても何も問題ありません。

 

 

 

 

雑記

 

法花園の近藤さんとは公私共に仲良くさせてもらっているのですが、こういうインタビューとして話を聞くとやはり知らないことが多く大変勉強になりました。

 

TOKYとしてもBCさんを紹介いただいたり、店舗内の什器を制作してくれたり、植物を卸してくれたりもするので今後ますますその繋がりは深めていきたいなぁと思うところです。

 

後は誰のためにもなりませんが法花園の近藤さんを仁王立ちさせて写真を撮るという “Chan Trip” というプロジェクトをInstagramで不定期で行っています(会った時に撮るだけ)。

 

高い所に登らせたり、飛び降りさせたり、何をオーダーしても嫌な顔1つせずこなしてくれる彼の懐の広さが仕事にも現れていると思います。

 

皆さんも是非Waftでのビカクシダ購入や什器制作などで法花園の近藤さんにオーダーしてみてはいかがでしょうか?

 

 

DSC02216什器を制作する工房。右下の木工用ボンドを拾ってほしいです。

 

 

DSC02237TOKYで販売した「法花園の近藤さん  ブローチ」。頬骨の盛り具合に制作者の闇を感じます。

 

法花園HP
法花園の近藤さん(Instagram)

 

Interview06 / 一般財団法人 進化生物学研究所 橋詰二三夫さん

2017.06.29

植物界のキーパーソンにスポットを当ててインタビューする企画、第6回目。

今回は世田谷にある一般財団法人 進化生物学研究所の橋詰二三夫さんです。
マダガスカルの南部にある多肉植物から進化を辿ると言う植物マニアなら涎モノのロマン溢れるご職業の橋詰さん。皆さんご存知のバオバブ、アローディア、ユーフォルビアなどの知られざる秘密に迫りたいと思います。

 

橋詰二三夫さん
世田谷にある進化生物学研究所研究員である橋詰さん。
主にマダガスカルの南部の乾燥地帯を中心に多肉植物を皮切りとし、生物の進化を辿る研究を行っています。
年に数度マダガスカルに渡り自生する植物と現地に住む人達に接しマダガスカルの文化を深く知る橋詰さんの貴重なインタビューとなりました。
一般財団法人 進化生物学研究所

 

 

DSC02053進化生物学研究所内のバイオリウム内では橋詰さんが植物について詳しく説明してくれました(手前緑色のジャンパーの方)

 

 

 

ー橋詰さんの職業内容を教えてください。

 

多肉植物研究室の研究員となっています。

 

役割としては研究所内の学芸員、いわゆる博物館の指導員のような位置づけとなっています(実習生に対して指導を行うような立場)。

 

研究者としての研究対象としましてはマダガスカルの南部に生息・自生する動植物を専門に研究しています。

 

 

 

ー「生物の進化」と聞くとガラパゴス諸島を思い浮かべてしまうのですが何故その対象がマダガスカルなのでしょうか?

 

1960年代にその当時の所長である近藤典生さんがアフリカの動植物を研究していく中で日本ではまだ未知であったマダガスカルを調査するという流れになり、豊富な生態系を育む同島をベースに生物進化の研究を行うようになったと聞いています。

 

 

DSC02016バイオリウム内の順路(右から回ると)を辿るとマダガスカル、アフリカ、メキシコなど乾燥地やボルネオなどの熱帯雨林を廻るコースを回ることができます。

 

 

 

ー現在植物を中心とした積極的に研究していることなどあれば教えて下さい。

 

現地の人がむやみやたらと伐採、焼き払ってしまった多肉植物のアローディアなどで出来た森林を「どのように再生させるか?」などの91年より研究所が行っている森林再生に関する試みに力を入れています。

 

方法としましては、現地調査の情報を元にこちら(研究所内)で手法を考えて現地のマダガスカルで実践する、ということが主となります。

 

ただ、現地にもリレーションをとっているマダガスカル人の専門家がいますのでオンラインでの情報のやりとりなども行い現地にいかずとも森林再生に関する活動を行うことができます。

 

まぁ森林と言っても日本で言うところの木本化の樹木ではなく多肉植物がほとんとですけどね…笑。

 

 

forestアローディアとユーフォルビアで構成された森。マダガスカルの人にとっては日本で言う雑木林など普通の森という感じでしょうか。

 

 

 

ー次にマダガスカルに行く予定などはあるのでしょうか?

 

2017年の7月の下旬に3週間ほど行く予定です。

 

私は英語などは話せませんがマダガスカル語をある程度話す事ができますので割と長期滞在での研究も可能です(マダガスカル語を聞いてみたいな…と思いましたが恥ずかしいので聞くことは出来ませんでした 笑)

 

あとは当研究所が母体となってるボランティア団体のサザンクロスジャパンという協会があるのですが、マダガスカルの森林復元活動に参加希望の高校生をマダガスカルに連れて行こう、ということになっているので私が同行することが1番早いと思いました。

 

 

 

house原住民アンタンドロイ族の家。こんな所に日本人が行って大丈夫なのか?と心配になります。ちなみに家屋の建材は木本性多肉植物のアルオウディアプロケラ(Alluaudia procera)の心材が使用されているという貴重な1枚。

 

 

 

ーちなみにマダガスカルの治安や情勢はどのような感じなんでしょうか?

 

正直なところリアルタイムで状況が変わるので「よく分からない」ということしか言えません。私自身は危険な目に合っていませんが、合わないよう、現地での情報収集に気を使っています。

 

ただ、先進国や大規模な観光地と同じような感覚で旅行するのは危険だと思います。

 

例えばマダガスカルの現地のお墓の回りにはモリンガ・ドロウハディ(moringa drouhardii)という多肉植物が植えられていますがこの植物には近づかない方が無難です。

 

お墓の守人のような意味合いで植えらることが多く、一見バオバブのようにも見えますので興味本位で近づくとお墓の敷地内に入ることになってしまいがちです。

 

それをもし現地の人に見つかったら深刻な問題になります。外部の人間が、もっと言えば血縁関係ではない人間が敷地内に進入するとそれを牛の血を用いて清めるためです。

 

牛一頭、もしくは複数頭の血で清めるためその牛の代金を請求されます。物価の大変安い国ではありますが牛を複数頭はかなりの痛手となりますし敷地内に入られた現地人がどのような対応を取ってくるのか予測がつかないからです。

 

特にお墓の回りは禁忌の地となっており貴重な植物が豊富に残っている場合が多いのです。それらを見極めるためにはモリンガは逆に目印となりますので見つけたら近づかないのが無難でしょう。

 

 

moringaお墓の回りに植えられたモリンガ・ドロゥハディ(Moringa drouhardii)。非常に魅力的なボトルツリー形状なので思わず近くで見てみたくなりそうですが近づかないで下さい。

 

 

ー他の植物に関する情報などはありませんか?

 

日本でも人気の多肉植物アローディアなどは現地では木材の代わりとして使われるために大きな個体は特にですが数が激減し深刻な問題となっています(森林再生と深くリンクする部分)。

 

矛盾するようですが現地人は草木が邪魔な場合はすぐに火を付けて勝手な焼き畑をしてしまうんですね(ちなみに焼き畑は禁止とされていますがそこは「見つからなければ大丈夫」といういかにもな理由で焼き畑はなかなか減らないそうです)。

 

現地の人は日本人のように計画的に焼き畑をするわけではないので結果として自然の力で鎮火するまで燃やし尽くしてしまっています。

 

私たちが見たら中には貴重な植物も時には含まれますが彼らは「まだたくさんあるから大丈夫」という考え方なので現地人には「資源が無くなる」という概念自体が乏しいのが現状です。

 

 

あとユニークなのはユーフォルビアの活用法ですね。

 

例えば樹液の毒を魚毒として使って漁をします。使われるのはユーフォルビア・レウコデンドロン(Euphorbia leucodendron)で幹を傷つけて白い樹液を川に流し麻痺させて漁をします。

 

 

euphorbia_01川を塞き止めて樹液で行う漁。これで採った魚を食べたくないのは私だけでしょうか…汗

 

 

そして家畜のエサとしてもユーフォルビアが使われます。日本でもたまに見かけるユーフォルビア・ステノクラーダ(Euphorbia stenoclada)は牛のエサとなります。

 

一般的に毒性の強いユーフォルビアを食べるなんて信じられませんが平気で食べていますね。

 

 

euphorbia_02この牛のミルクや肉を食べたくないのは私だけでしょうか…汗

 

 

ー現地と日本でギャップを感じたことなどありますか?

 

有名なバオバブなどは良い例かもしれませんが日本人は「巨樹信仰」が強いと考えられているのですがマダガスカル人にはそういう考えが一切ありません。

 

あくまでもクワやブナみたいな”普通の木”の感覚なんですよね。大きいから大事にしているからというとそんなことはないし粗末にしているかというとそうでもない。

 

本当にただの木としか見ていません。ただ葉が食料や薬になるので生活に密着していることは間違いありません。

 

 

baobabバオバブをバックに現地の子供達と交流する若かりし頃の橋詰さん。

 

 

ーとても貴重な動植物が伐採や焼き畑、そして我々が趣向品として乱獲することに関してどう思われていますか?

 

私たちで言えば1番分かりやすいのがワシントン条約などがその大きな基準になりますよね。

 

当然ながら現地人にその話をしても通じませんし上記でもお話しした焼き畑の部分と通じますが「こんなに焼いたり伐採したら無くなってしまうよ」と彼らに言っても「まだたくさんあるから大丈夫」という考え方ですからなかなか伐採や焼き畑は無くなりません。

 

ただ、アローディアなどは材木や板などと同じように伐採され加工されているわけですが大きな材料となる巨木が無くなっていることには危機感を覚えているようです。

 

たくさんあるけれど使えるものが減っている、という感覚ですね。あくまでも貴重なものとかそういう観点では捉えていません。

 

彼らと私たちの植物に関する価値観は全く違います、例えば自生している奇怪な植物に関して彼らは特に何も感じませんが“そこにないもの”外来の動植物には非常に興味を示し特別に奇異な目で見たりします。

 

それは私たちがドクダミやヨモギを見ても何も思わないのと同じかもしれません。

 

 

baobab_02牛のエサにするために無残にも切り倒されたバオバブ、アダンソニア・ザ(Adansonia za)。無残という価値観も私たちの特有のものだと考える必要があります。

 

 

ーじゃあ現地に自生する植物、例えばパキポディウムなどを趣味として生育している人なんていないですよね?

 

これが面白い事にそういう人もいます。ただ、私が研究する南部の乾燥した地域ではなく例えばマダガスカルの中心であるアンタナナリボなどでは趣味家のような人も存在しています。

 

パキポディウムを庭やプランターに植えて鑑賞したり、ただ、それは基本マダガスカルの中でも一部の富裕層の人達だけなので希なケースと言っても過言ではないです。

 

後は厳密なことを言うと、山で採ってきたパキポディウムを所有することはWWFの規定では厳しく罰せられます。マダガスカル国内でも自生地を荒らすことに相当する行為は禁止です。

 

ちなみにパキポディウムなどの多肉植物を実生している人もいますが(マダガスカルの研究員の方もやられているそう)それは基本的に農家や研究者、あとは極一部の富裕層の人間だけだと思います。

 

ただ、そういった富裕層の人間が多肉を生育することとは別に、単純に花を愛でたり育てたりする習慣はどの街や村を見てもあるのでその辺りの感覚は世界共通と考えています。

 

 

 



 

 

ー諸外国の為の自生地の植物を山採りすることに関してはどう思われますか?

 

あまりにも公に、大量に自生地のものを採っていたらWWFが黙ってはいないと思います。CITESに属するものなどはそういった過去の歴史を物語っています。

 

ただプラントハンターや現地のナーセリーの人たちもその辺りは上手くやっていて一度山採りした植物をナーセリーで管理することによって「これは山採り植物ではありませんよ」と言う形を取っている場合もあるそうです。

 

私の立場ですと山採りの善し悪しを言う立場にありませんし山という資源をお金に換えることは決して悪いことではありません。

 

ただ採ったとしても“山の資源を減らさない”と言うサイクルがある前提、もしくはそういったことを作った上で山採りをするべきと考えます。

 

ちなみに人気のあるオペルクリカリア・パキプスなどは自生地にあるにはありますが趣味家が欲しがるような立派な樹形やずんぐりしたものは乱獲されかなり少ないです。

 

いかにマダガスカルという地であれど多肉植物が立派な樹形に育つのにはそれなりの年数が必要です。

 

特にオペルクリカリア・パキプスなどは痩せた石灰岩の土地に自生していますので樽のような、球形の様な形に育つまでは気が遠くなる年月がかかるはずです。

 

だから先ほど言った“山の資源を減らさない”というサイクルは成立していない、できないでしょうね。

 

それをさまざまなプラントハンター達が乱獲していたとしてもそこに対する個人的な想いはあったとしても立場上語るべきでは無いと考えています。

 

 

DSC02062中央に地植えされた枯れた葉が不気味な通称:巨人アロエ。アロエ・バオンベ(Aloe vaombe)。橋詰さんは特に「これ」という固有の植物が好きということは無いそうですが栽培場にもたくさんあったことやバイオリウム内でも幾つか見かけたのでバオンベに関しては好きそうな印象を受けました。

 

 

ー何か個人的に好きな植物などありますか?

 

「一つのこの種類が好きだ」という事は特にありません。私は研究者なので例えば1㎡四方の中に自生するいわゆる「同所性」、属や科が異なる植物たちの相互の関係性を調べて知る、と言うようなことが好きなのです。

 

同じ場所にいるのにどうやって種として独立をしているか、その場合開花時期をずらしてポリネーター(送粉者:花粉を運ぶ虫や鳥などの事を指す)との関係はどうなっているか、など。

 

 

DSC02078ポリネーターであるスズメガ、パキポディウムなどの花びらに高さがある花などはこう言った長い管を使って蜜を吸うそうです。

 

 

私が知りたいのはそういった同所性であるとかその中でどのようにお互いと繋がりその中で個として成り立つことが出来るか、それらが進化の過程で作り上げられる“関係性”を調べることが面白いのです。

 

パキポディウムなど「なんでわざわざ岩の隙間に生えてるの?」ってことありますがあれは逆に言えば他の植物が少なく日の光を取りあう生存競争が少なく「生きていく上で最適だった」だけとも言えます。

 

かといって少しでも場所を変えるとそれらの植物は全く生えていなかったりします。自生する場所にはそれらが生えるなんらかのトリガーがあるのですが同じ場所であっても一度採ってしまうと二度と生えてこないこともあります。

 

何が原因となってそのトリガーが崩れるかも今はまだ分かっていません。

 

 

 

ちなみに全然関係ありませんが高山性のパキポディウム・ブレビカウレ(和名は“恵比寿笑い”)などは自生地に行くと辺り一面ブレビカウレ、なんてこともあります。

 

歩くのに邪魔なので本音で言えば蹴っ飛ばして歩きたかったですし少し踏んで歩いたような… 笑。

 

 

 

 

雑記

 

研究者という立場の橋詰さんのお話しでしたので専門用語も多く読み解くのになかなか時間を要しましたがかなり密度の濃い記事を書けたと思っています。

 

一般の方が入場できる場所は展示室とバイオリウムのみですがそれでも「東京にこんなところがあるのか!」と驚かれることは間違いないと思います。

 

今回のインタビューの実現にはTOKYで取り扱う用土 best soil mixを販売するBANKS CollectionのCEOである栗田さまのお力添えがあったことをこの場でご報告と共に御礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございました。

 

事前予約すれば橋詰さんがガイドを務めるバイオリウムツアーにも参加できますのでより詳細に知りたい方は是非ご予約をしてみてはいかがでしょうか?

 

 

DSC02076右が今回お話しを伺った橋詰さん。左の眼光が鋭い紳士がBANKS Collection CEOの栗田さんです。

 

 

DSC02038バイオリウム内に地植えされたバオバブ。橋詰さんは「内部が柔組織の水ぶくれの木」と表現していたのが印象的でした(多肉植物ですからその表現は正しいんでしょう)。

 

 

DSC02057バオバブの樹皮をめくると強烈に緑の肌が。いわゆる“木”との大きな違いで葉がなくとも光合成が可能です。

 

 

DSC02033人気のオニソテツもあります。これらも地植えにしたらかっこよさそうですがとんでもないことになりそうです。

 

 

DSC02042マダガスカルから南アフリカを廻ると今度はメキシコのブースが見えてきます。巨大なサボテンの奥には東京農大だけにアガベの“農大No.1”が鎮座しています!!

 

 

DSC02022バイオリウム内の人気者、通称:「イグアナさん」にご飯をあげる橋詰さん。

 

 

DSC02085かなり立派で近代的な施設となっています。

 

 

展示室とバイオリウムはどなたでも無料で閲覧が可能ですので是非行って見てください!!

 

・住所:〒158-0098 世田谷区上用賀2-4-28
・営業/開園時間:4~11月:10:00~17:00(入館は~16:30)、12~3月:10:00~16:30(入館は~16:00)
・休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、月末の火曜日、大学が定めた休日
・ホームページ:東京農業大学「食と農」の博物館・バイオリウム

 

 

Interview05 / BANKS Collection 杉山拓巳さん

2017.04.28

植物界のキーパーソンにスポットを当ててインタビューする企画、第5回目。

今回はTOKYで販売する特別な用土、best soil mix の開発者でありBANKS CollectionのCOOを務める杉山拓巳さん です。

他のどこにも染まらない独自の視点で作られるプロダクト数々、そして植物の生産。

best soil mixのまだ語られていない真実にも迫ります。

 

杉山拓巳さん
生産者であり園芸家、そして自身では「熱帯植物栽培家」と名乗る杉山さん。
広大な温室にちりばめられたとてつもない数のきらめく植物たちを見るだけでも只者では無いと分かる。
今までの植物の常識を鵜呑みにせずにユニークで理論的なアプローチで生育を行っています。
BANKS Collection

 

 

広大な広さの温室で杉山さんが色々教えてくれました。お話しがとても面白いんです!

 

 

 

ー杉山さんの職業を教えてください。

 

ざっくりと言うと植物の生産を行っています、自分では熱帯植物栽培家と呼んでいます。

 

たまに園芸研究家と呼ばれることもありますが研究はしていないのでそれは違うと思っています。

 

植物の歴で言えば30年くらいだと思います。

 

 

 

DSC01907サトイモ科のアンスリウムは一昨年まで6万鉢、今年は2万鉢程度出荷するそうです。

 

 

 

ー植物をはじめられたきっかけは?

 

父親が植物の趣味家だったこともあり小さい頃から色々なお店に連れて行かれ大人達の植物談義を聞いているうちに興味が沸いてきました。

 

先日小学校4年生の頃に書いた「30歳の自分へ」という手紙を発見し読んでみたら「30歳の僕は植物の交配をしていますか?」と書かれていました 笑。

 

実際やってましたからある意味小学校4年生の僕は先見の明があるなと…笑。

 

 

DSC01899根伏せから5年で作られたオペルクリカリア・パキプス。杉山さん曰く「普通です」普通じゃありません。

 

 

 

ーBANKS Collectionはどういう会社(団体)ですか?

 

簡単に言うと「園芸の世界をもっと良くする会社」ですかね。

 

「もっとこうしたらいいのに」という、輸入なり生育なり、現代の園芸における自分たちなりの疑問点を解決をするための会社がBANKS Collection (以下BC) という位置づけだと思っています。

 

あとは製品を作るというところで言うと「今無いものを作る」ということを意識しています。

 

海外から色々と使えそうなアイテムを輸入してカスタマイズしてみて使えるか使えないか、などトライアンドエラーを常に繰り返しています。

 

一応人から聞かれると最近は「園芸総合商社」と言うようにしています。

 

 

 

BCのオリジナル商品「バイオマスプレート」に着生したティランジア イオナンタ ’フエゴ’の群生株たち。しっかりと着生させるまでは1年ほどかかるそうです。それにしても美しいですね。

 

 

 

ー会社を作ったいきさつを教えてもらえますか?

 

元々はBCのCEOである栗田が高校の同級生の務める会社の取締役だったんです(胡蝶蘭を取り扱う会社)。

 

その栗田がたまたま僕の温室に植物を見に来た次の日に経営計画書が送られてきて 笑。

 

「僕なら3年後にこうできます〜」みたいなことが書かれていました、、汗。

 

ただ僕は僕で会社を作ろうと思っていてそれに向かって動いていたのですがなかなか重い腰が上がらなかったこともあり栗田の方からそれであれば対等な立場で会社経営をしないか?という提案があったので受けることにしました。

 

会社を作ると決めた4日後に何故かTV番組「マツコの知らない世界」からオファーをいただき色々と加速した感があります。

 

 

 

水栽培された巨大なティランジア。「普通はやらない」ということを鵜呑みにせずに常に疑問を持って生育をしているそうです。

 

 

 

ー植物の生育について実践していることや考えていることを教えてもらえますか?

 

例えばチランジアの水栽培、普通の人はやりませんがこれで栽培すると通常の生育に比べて何倍ものスピードで大きく育てることができますし見ての通り株姿に支障がでることもありません(根が生い茂るチランジアに抵抗がある人はいるかもしれませんが…)

 

あとはビカクシダなど、今の主流として柔らかく作ってサッと根を伸ばす生育方法に疑問を持ちました。

 

僕は今best soil mixで育てたりもしています。

ビカクシダ(特に難物と言われるマダガスカリエンセなど)がダメになる大きな原因として「乾燥によるもの」という状態があげられます。

 

でもそこで「乾燥によるもの」って一体なんだろう?と考え直しますと根が収縮によって千切れると仮説しました。

そしてbest soil mixには根が収縮するような成分がほとんど入っていません。

 

best soil mix は徹底的に微塵を取り除いた硬質の赤玉土や鹿沼土を使っているため根が土に到達したところで土を壊せず分岐を促すため通常の水苔などよりも根の張り方が変わり分岐が多い根にします。

 

しっかりと根が張った状態で水の管理をしっかり行えば現状行われている柔らかく作る、というアプローチよりも丈夫で形良く作ることが可能と考えています。

 

 



 

 

——-

ここで話しがはずれてTOKYで管理しているマダガスカリエンセの子株をbest soil mixで管理したらどうか?という質問をしました。

 

問題なく生育できますが水苔と違う水やりを行う必要があるのでコツが必要なのと腰水管理をするとbest soil mixに染みこませてある成分が溶け出すので注意が必要、とのことでした。

 

そして杉山さん曰くその際のベストな水やりとして表面の1cm程度が濡れるような水やりを始め徐々に深く水やりをするといいそうです。

 

まずは地表から1cm部分にしっかりと根を張らせ少しづつ下げて行くことで全体にしっかりと根を張らせることができるそうです。

 

ただそれだとすぐに乾いてしまうので一日に何度が水やりが必要なようですので普通の人にはあまりお勧めできない、とも仰っていました。

 

TOKYは管理場を空けることもあるので普通に1日1度ほどの水やりを行おうと思っています。

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あとはチランジアの人為的な変異やそれらの固定作業の話しをお聞きしましたが正直かなり難しくここで書くことができないので詳しく知りたい方は「熱帯動植物友の会 会報」をご覧ください、と言いたいところですが現在は会員募集を行っていないようですね。

 

 

 

DSC01976出荷を待つbest soil mixたち。

 

 

 

ーお話しの中で出てきた用土 best soil mixについてもう少し教えていただけますか?

 

この土を作るきっかけは例の「マツコの知らない世界」出演だったんです。

 

詳しくは言えないのですがあの番組に出演してそこで僕がある植物と土について発言したことによってとある方に怒られたんです。

 

僕は土をもっと固く作って根にストレスを与えてあげればもっと良い根が張れるのに、と思っていたのでこの機会にもっと真剣に土を作ってみようと思ったんです(文中でも触れている根が硬い土に当たって分岐することを指しています)。

 

まぁそのとある植物の事を悪くも言っていなかったのですが編集によってそう見えてしまったのもありましたがちょっと色々と証明する為に開発を始めました。

 

 

 

ーそこから本格的な開発がはじまったのですね?

 

そうですね、そこから自分の理想とする土や素材を探してトライアンドエラーを繰り返しました。

 

良い土や素材に出会いそして自分で配合するわけですがこだわった中の2つが「徹底的に微塵を排除する」「全ての工程において器具含めアルコール消毒を行う」ことです。

 

微塵は水やりで流れ出るわけですが全てが流れ出るわけではないので残った微塵により水道 (みずみち)ができてしまいます。その水道により細根を窒息させてしまうことがあったりしますので。

 

徹底的に微塵を取り除いた硬い土は根をドンドン分岐させます、本当は矢作砂や山砂などもっと硬いものを入れたかったのですがいかんせん、もの凄く重くなるのと植え込みがしにくくなるのでそれは断念しました。

 

軽石に関しては多くの用土にも入っていますがパーライトなどと違って水を吸い込むし吐き出す、という良い特性があります。

 

あとは表面に苔などが付いた場合それらが肥料分が多いかの目安になる。そして水やりをするたびに下に流れるという自然界の理と近い機能を果たしてくれます。

 

 



 

 

そしてこの土に関して他の方に真似の出来ない部分。用土全体に3種類の特殊な液体が染みこませてあり分かりやすく言うとその1つは「植物の化石」です。その他は企業秘密なのでお伝えすることはできません。

 

これらは微量なので成分表記する必要がないですし専用の機器でもってしても検出はできません。

 

ちなみにbest soil mixは僕が全て手作業で作っているのですが培養土屋さんに委託しようとお願いしたこともあったのですが工程があまりにも多いということで断られました笑。

 

と言うこともあり大量に作れるように機械を導入しましたので今後は播種・挿し木用や大鉢用の土を作って行きたいと思います。

 

 

 

DSC01942品種不明のハイブリッド パキポディウム。この大きさで実生2年目だそうです。

 

 

 

ー植物に関して現在実験していることなどありますか?

 

ずっとやってきていることですが植物を早く大きく作る「早生栽培(そうせいさいばい)」にはとてもこだわっています。

 

早く植物を作ることで出荷するサイクルも早めることができますし何より僕の作った植物のサイズ感と歳月を聞いて驚く人の顔が面白いというのもありますね。

 

先日植物を研究する某大学の教授が訪れた際に「え、そんな時間でこんなになるの!?」と驚いていてそれを見るのがわりと楽しくて…笑

 

でもやってることは至ってシンプルだったりします。例えば皆が嫌う徒長も僕は積極的にそのメカニズムを活用します。

 

葉が徒長して長くなったりするのは太陽光を受ける面積が増えるってことですから僕は敢えて徒長させたり葉を多くして「グワっ」と大きくさせたりすます。

 

あとは根の先端を乾かさない。これはなかなか伝えずらい部分ですので皆さんで考えてもらえればと思います。決してつねにビタビタにしろってことじゃないですよ 笑。

 

とにかく!誰よりも早く大きく、誰よりも早く花を咲かせて種を採る、ということにとことんこだわっています。

 

特に原種の植物は基本的にセルフで受粉して種が採れるはずですし、もっと言えば雌雄異株でも絶対的に孤立した状況になれば雄も雌になったり、その逆もあり得ると考えています。植物に絶対は無いんです。

 

ちなみにハオルチアは水苔栽培すると休眠せずにめちゃくちゃ生育早いです。そんなアホなことばかりしてます 笑。

 

 

 

DSC01930開花したビルベルギア オビ=ワン、親株はとにかくできる限り早く生育させて子株を出すことに注力しているそう。

 

 

 

ー最近の活動で面白そうなことがあれば教えて下さい?

 

若い子たちに夢を持ってもらいたいのもあって地元の農業高校と植物の色について今色々やっています。

 

アントシアニン(色素)を濃くして黒いハエトリソウや黒いサラセニアや黒いハオルチア・オブツーサ、もしくはピンクのオブツーサを作ることなんかにもチャレンジしています。

 

そこの実験室には今フラスコ内にアガベがたくさん入っていてそのうち見たことのないアガベをお披露目できると思います。

 

高校生たちが作った新しい植物が世界をざわつかせたりなんてしたら夢があって面白いですよね。

 

 

 

DSC01970肥料や活力剤をミキシングして灌水ができるスプレー、使い勝手もそうですが見た目の格好良さにもこだわります。

 

 

 

ー今後リリースされる予定のプロダクトを教えてもらえますか?

 

さきほども触れましたが用途別のbest soil mix、そして根を強靱にすることにフォーカスした活力剤。

 

活力剤は根の部分を皮切りに部位に絞ったものも細かく出して行く予定です。

 

あとは写真にもあるような肥料や活力剤をミキシングして灌水できるスプレー。

 

細かいところで言えば植物に害虫が寄ってこないようにする受け皿やヒートマットなどなど…色々です。

 

 

 

貴重なアデニア・アキュレアータもありました、今アデニアで色々実験しているみたいです。

 

 

 

ーこれから植物を栽培する人、もしくは現在栽培で悩んでいる人へのメッセージなどあれば

 

植物は根を育てるもの、要は基本見えていないもの。育てるにはイマジネーションがとても重要です。

 

教科書通りに育てたって上手く育たないことなんていくらでもあります。

 

頭の中で植物を栽培できない人は実際に栽培したらやはり上手くできないはず。

 

植物の可能性は一方向じゃなくて何方向もある、そしてそれらのほとんどはコントロール可能です。

 

それを自分の手で探るのが楽しいんです。

 

植物を育てる、というよりも「根を育てる」という風に考えてみるといいかもしれません。

 

 

 

 

雑記

 

TOKYがBCさんを知ったのは杉山さんと友人の法花園近藤さんの手引きでした。

 

「すごい土があるんですよ〜〜〜」という言葉に興味が惹かれ法花園のハウスに訪れ・・・そこからはあっという間に杉山さんの温室に導かれたような気がします。

 

インタビューをする中で何度も出てきた言葉「新しい」「今無い」などのキーワード。

 

深度やチャンネルは違いますがTOKYも同じようなことを考えて日々模索していると思っています。

 

たった数年の栽培歴とその10倍近く植物に費やしてきた人達ではやはり超えられない壁はあります。でもBCさんのような新しい考え方をする人達がいて正直とても嬉しかったです。

 

今後もBCさんとは色々プロダクト販売だけでなく仕掛けて行けたらと思っています。

 

 

 

DSC01961巨大なティランジア・イオナンタ!!ティランジアは葉数を輸入時よりも増やして出荷するというこだわり。

 

 

ここ実は打ち合わせスペースです、凄すぎます!

 

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